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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 翌日、今度は元西と杉山が、再びN商事の本社へと出向いた。女性のほうが、上手く話を聞き出せるかも知れないからである。
 今回は、松田が部下としてはどう思われていたのかを調べる為に、中央管理部の部長との面会を要請した。予想外にも、すんなりと通して貰えた。
「松田隆文さんのことでお伺いしました。神奈川県警の元西と杉山です。」
「初めまして。私は、中央管理部部長の渡嘉敷です。それで、彼の何について聞きたいのですか。」
(ずいぶん冷たいんだな、松田に対して。)
 と、元西は思った。
「彼は、この部署の課長を務めていたのですよね。」
 と、杉山が聞いた。
「ええ、そうですよ。」
「彼がこの部署で担当していた仕事は何ですか。」
 と、元西は聞いた。
「まあ、簡単に言えば、N商事全体の情報の管理ですね。各地方の会社が結んだ契約なんかもここに集まって来ますよ。」
 と、渡嘉敷は言った。
「なるほど。では相当重要な仕事に就いていたと言うことですか。管理だけではなく、実際に契約の場に立ち会ったりすることはありましたか。」
「うーん、そうですね、私の知る限りでは、滅多に無かったと思いますけど。」
「何か、知られてはならないような取引なんかがあったとか聞いてないですか。」
 と、元西が聞いた。
「……さあ、個人的に知られてはならないのなら、私も知らないと思いますけど。」
 と、渡嘉敷は言った。
「そうですか。今日はありがとうございました。また質問があったら、お伺いするかも知れません。」
 そう言って、二人はN商事の本社を去った。
「今の渡嘉敷部長の発言を聞いたか。」
 と、元西が聞いた。
「ええ、意味あり気な一言でしたね。少し間がありましたから、きっと何か知っているんじゃないかしら。」
「ああ。おそらく、本当のことを言おうか、一瞬悩んだんだろう。」
「もしかしたら、渡嘉敷さんが、今回の事件に一枚咬んでいるかもしれませんね。」
 と、杉山は言った。
「まあ、今のところは余計な考えはやめよう。事実だけ見てれば良いさ。」


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