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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 次に丸山が向かったのは、栗原宅である。釈放後の状況の確認と、身代金請求についての反応を見るためである。
 栗原の家は、相鉄線沿線の星川駅の近くにあった。
「どちら様ですか。」
 呼び鈴を押すと、栗原が顔を出した。ずいぶんとやつれている様に見えた。
「神奈川県警捜査一課の丸山と申します。原口警部に言われて伺いました。」
 と、丸山は言った。
「県警さんが今度は何の用ですか。再逮捕なんて言わないでくださいよ。」
 と、栗原は幾分きつい眼をして言った。かなり警戒している様である。
「いえ、そんなことは有りません。安心してください。ただ、少しお話がしたいのですが、よろしいですか。」
「ええ、まあ良いですよ。」
 そう言って、丸山は栗原の部屋へ通された。
「それで、一体何の話ですか。」
 栗原はお茶を淹れながら言った。まだ、警戒心は解けていない様子である。
「大した事ではないのですが、一応伝えたほうが良いことが有りましたので……。実は、近藤夫妻が誘拐され……」
「なんですって。」
と、栗原は血相を変えて言った。
「……それで、身代金を合計1億円要求されたんです。身代金は全額支払ったのですが、二人が解放されたという話はまだ来ていません。」
 と、丸山は栗原の様子を見ながら説明した。
「そんな、まさか。悠太たちが誘拐されるなんて。刑事さん、冗談ですよね。だって、大の大人が誘拐なんて、聞いたこともありませんよ。」
 栗原は、ぼそぼそと言った。かなりショックの様子である。丸山は、今回の件に栗原は全く関係していないと確信を持った。
「残念ながら、全て事実です。栗原さんは近藤さんとは親しいのですか。」
 と、丸山は聞いた。
「小学校時代からの無二の親友です。」
「そうですか。後々のために覚悟してもらわなければなりませんね。考えたくない事かも知れませんが、もしかしたら、最悪の場合、近藤夫妻は既に亡くなっている可能性も否定できません。」
 と、丸山が言うと、栗原は絶句した。
「そんなこと……無い……ですよね。」
「あくまで可能性です。私たちも、彼らが生きていると信じていますから。」
「……今日はもう帰ってください。」
 栗原はそう言って、丸山を外へ追い出し、ドアをバタンと閉めてしまった。
 丸山は仕方なく、原口警部への報告のために県警の横浜署へと戻った。


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