[携帯モード] [URL送信]

十五年越しの殺意(外村駒也)完
ページ:6
 車は、元西が予想したとおり、関越自動車道へと入っていった。武井は、すべてが予想通りに進みすぎていたために、かえって不審に思い、嫌な予感がしていた。
「なあ、ガワさん。どうもおかしいとは思わないか。普通なら早く現金を仲間の元へ届けようと思うものじゃないのかな。」
「そうですね。やけに進み方が遅いような気がします。追い越し車線も全く使いませんしね。」
「あえてこっちの動きを見ているとは考えられないかい。」
 と、武井は聞いた。
「それはないと思いますが……。尾行に気づかれないようにやっているつもりですよ。一応少し距離をとってみますか。」
「ああ、そうしてくれ。」
 そういって、小川が車間距離を開けたときだった。横から1台の車が割り込んできた。それと同時にライトバンが追い越し車線に出て、急にスピードを上げて先へと行ってしまった。
「ガワさん、もっとスピードを上げてくれ。」
「これでいっぱいです。これ以上出したら、私たちが捕まりかねません。」
「ちくしょう、してやられたな。」
 武井と小川は、完全に車を見失っていた。読みどおりならば石川方面へ向かうはずだが、それでは雲をつかむ様な話である。
「警部、さっきの割り込んできた車は偶然だったのでしょうか。」
 と、小川が聞いた。
「それは分からない。ただ少なくとも、相手のほうはずっと一瞬の隙を窺っていたということだ。」
 しばらくして、元西から電話がかかってきた。
「警部、すみません。石川県までは入ったのですが、市街地になった途端に撒かれてしまいました。」
「気にするな。こっちも見失ってしまった。とにかく、君は県警のほうへ戻ってくれ。私たちも警視庁へ戻って、犯人からの近藤夫妻の解放を待とうと思う。」
 と、武井は言った。


[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!