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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 栗原は今、JR横浜駅のダイヤモンド地下街を歩いている。今日は、中学校の同窓会が開かれるはずだ。中学校時代の友人と会うのは、ちょうど15年ぶりである。彼は現在、市内の高校で英語の教師をしている。ほぼ3年に一度の割合で同窓会は開かれていたのだが、彼はいつも仕事で忙しく、一度も参加したことはなかった。しかし、今回は休暇中だったのと、彼の中学時代の親友である近藤が先月結婚をしたので、そのお祝いもかねて参加したのだった。
 約束の5時までは、まだ20分ある。今回の幹事である中田が有隣堂前に迎えにきてくれることになっている。場所はどこだったろうか。確か、東口のスカイビル29階のレストランを貸し切るらしいのだが……。
 有隣堂前につくと、中田は既に来ていた。
「お、栗原。久しぶりだな。ずいぶん元気そうじゃないか。」
「お前こそ元気そうだな。昔とあんまり変わってないんで、すぐに中田だってわかったよ。」
 と、栗原は言った。
「何だよその言い方は。俺を馬鹿にしているのか何なのか。」
「まあ、かっかするな。久しぶりに会ったのだから。そういや、どこでやることになったんだ。」
「ああ、一応スカイビルの29階をなんとか貸し切れたから。ほら早く行くぞ、近藤が待っているんだからな。」

 スカイビルまでは、10分ほどだった。29階につくと懐かしい顔が揃っていた。不意に後ろから声をかけられた。
「栗原じゃあないか。ほんとに久しぶりだなあ。」
 中学の時の、学級委員の松田だった。
「松田、お前も来てたのか。何でも、N商事の重役だそうじゃないか。よく来れたな。」
「まあ、重役といってもそこまですごいわけではないし。しかし、今回も忙しいとか言って来てくれないものかと思っていたのに。いったいどういう風の吹きまわしだい。」
 と、松田は聞いた。
「ほら、悠太が結婚したって話じゃないか。だから何とか来れないかと思ってね。」
「悠太、って近藤のことか。」
「そうだよ。お相手のほうは誰なんだい。」
 と、栗原は聞いた。
「知らないのか。あの、渡邉恭子だよ、文化祭でミスに選ばれた。」
「本当なのか。確かにあのころから二人は仲が良かったからなあ。しかし、あんなに美人じゃあ、他にも男はいたはずなのに、よく悠太で落ち着いたな。」
「いろいろあったからな。まあとにかく中に入れよ。近藤もいると思うよ。」
 松田に促されてレストランに入ると、近藤が手を振っているのが見えた。
「将史、こっちに来いよ。ほんとに久しぶりだな。5、6年は会わなかったんじゃないか。」
 と、近藤は言った。
「そうだな、悠太とはそんなものかもな。他の人だと卒業以来15年全く会わなかった人もいるからな。まあ、とにかく何よりも、結婚おめでとう。」
「どうもありがとう。将史に言ってもらえると、本当に嬉しいよ。しかし、今日は大丈夫なのか。いつも忙しいって言ってただろ。高校のほうは、休暇なのかい。」
「ああ、運よく日が空いていたからな。」
 と、栗原は言った。
「そうか、それなら良かった。わざわざ休暇をとったとか言うのなら悪いなと思ったんでね。じゃあ、俺はほかにも挨拶して回らないといけないから。ゆっくりしていけよ。」
 近藤はずいぶんと忙しそうに向こうの方へと行ってしまった。

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