[携帯モード] [URL送信]

十五年越しの殺意(外村駒也)完
ページ:3
 一方の警視庁でも大変なことが起こっていた。ちょうど正午を回った頃だった。武井警部宛に電話がかかって来ていた。
「捜査一課の武井警部だな。」
「そうだが一体誰だ。」
「今ここに、近藤悠太がいる。俺が拉致監禁した。ちなみに一つ教えてやるが、近藤は15年前の市立宮田中の卒業生だぜ。松田隆文や、山口健太と同窓生だと言ったら分かるかな。」
 と、電話の相手は言った。
「それで要求は何なんだ。」
「さすが警部さんだ。物わかりがいい。要求は、身代金を5千万円だ。午後3時までに用意しておけ。受け渡しについてはその時に連絡する。」
「なぜ警察に連絡したのかね。妻の近藤恭子に連絡するのが筋じゃないのか。おかしい犯人だな。」
「……」
 そこで電話は切れてしまった。
「ガワさん。今の電話をどう思うかい。」
「どうもよく分からないですねえ。やはり、警部の言う通り、身内に要求するのが普通ですから。まさかとは思いますけど、犯人は初めから殺すのが目的じゃないでしょうか。」
 と、小川は言った。
「とにかく、県警側にもこの事を伝えよう。」
 武井がそう言って、電話を手に取ろうとした時、急にベルが鳴った。
「はい、もしもし。警視庁捜査一課の武井です。」
「あ、武井警部ですか。県警の元西です。ちょうど良かった。今こちら側で大変なことが起こったので連絡しようと思いまして。」
「一体何があったんだい。」
「それが、栗原を釈放してからおよそ1時間後の午前10時頃に、何者かから電話が掛かってきまして、近藤恭子を拉致監禁したと言って……。」
 と、元西が電話の向こうで言った。
「何、それは本当か。そっちでもそんな事があったのか。」
「そっちでも、って、警視庁側でもあったんですか。」
「ああ、そうなんだ。しかも、人質は近藤悠太だ。」
「近藤悠太と言ったら、近藤恭子の夫じゃないですか。」
「そうなんだ。しかし、二人とも人質にとっていたとは……。通りで身代金を身内に要求しなかった訳だ。」
 と、武井は言った。
「5千万円の方は、県警では準備できたのですが、警視庁ではどうしますか。」
「もちろん準備はするよ。受け渡しの時が、最も犯人を逮捕しやすい時だからね。犯人からの連絡は何時だと言っているんだ。」
「午後3時だそうです。」
「そうか。面倒な事になるな。」
「どうしてですか。」
 と、元西が聞いた。
「こっちも午後3時に連絡が来ることになっている。つまり、犯人は複数で動いているということだ。複数だと、内側から崩れる事もあるが、警察の動きも見張りやすくなるとも考えられるからな。それに、受け取りに来た犯人を捕まえただけじゃあ、人質を殺されてしまうと考えるべきだろうからね。」
 と、武井は説明した。


[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!