十五年越しの殺意(外村駒也)完 ページ:7 「私はただ、松田さんが今川愛奈を殺したとしか、伝えられなかったんです。」 清水が目に涙をためて訴えた。 「直貴が……瀧澤君があんなことをしたなんて考えられません。」 「君が頼んだんじゃないのか。」 と、岡部は聞いた。 「そんな……。」 「君は、15年前のあの事件の前々日、今川愛奈と二人で会ったんだろう。」 「それは……確かにそうです。でも、あの日は彼女に、松田さんと付き合ってあげてくれ、と頼んだんです。どうせ松田さんは、自分に振り向いてはくれないですから。だから、瀧澤君は関係ありません。それに、今回の事件に彼が関わっていたことも知らなかったんです。」 「何故、松田殺害計画に参加したんだ。君はそれほどまでに、松田のことを慕っていたんじゃないのか。」 「ええ、そうでした。でも、振り向いてくれないから、暴行殺人を犯すような人を最後まで慕える訳がありません。」 「君は、松田の事を初恋の人だと、元西さんに言ったそうじゃないか。名演技だったということか。」 「演技じゃありません。あれも事実です。私はただ、松田さんが好きだった。」 「君は、自分に嘘をついている。君は、松田を殺したいほど憎んでいたんじゃないのか。」 「何故ですか。」 「あの事件の夜、君は松田たちと共にいたんだろう。そして、松田に……」 「言わないで下さい。」 清水は岡部の発言を遮った。彼女は、泣いていた。 「あの日のことは、何もなかったものだと思って下さい。」 「君は理由もなく殺人に手を貸したことになる。」 「私は誰も殺してません。ただのパイプ役で……」 「君の発言が捜査を攪乱させたし、結局殺人の補助をしている。重い罪に問われるのは間違いないのが現状だ。」 「……それで構いません。」 清水は、そう呟いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |