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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 渡嘉敷が逮捕されたことを知るや否や、清水は自ら警察に出頭してきた。
 彼らの取り調べは非常にスムーズに進み、武井らの推理の正しさが証明されていった。
 だが、渡嘉敷に限っては、事件の全貌に関しては黙秘を続け、一言も話そうとはしなかった。
 それとは対照的に、青木は質問には全て答え、武井たちが知らなかったことまで教えてくれた。
「松田の殺害に関しては、山口に代行して貰ったんだ。俺は流石に、同窓会の場までは入れないからな。山口に代行と言っても、俺が実験室で生成した青酸カリを、中田を経由して飲み物に入れ、松田に飲ませたんだ。飲み物を山口が持って行くように、中田には動いて貰った。」
「あの日のスカイビルの停電は。」
「あれは俺がブレーカーを落としたんだ。タイミングは、中田に伝えて貰った。」
「ナイフを刺したのは。」
「中田だよ。」
「栗原を襲ったのは君なのか。」
「いや、そこまで時間はなかった。中田と山口に尾行させて、気絶させたんだ。その直後に、中田には山口を殺して貰った。」
「江戸川まで運んだのは中田という訳か。」
「ああ、そうだよ。鈴木に頼んで、中田と山口がいなくなったことは隠して貰ったから、やり易かったよ。」
「近藤夫妻の誘拐はどうしたんだ。」
「俺と中田で分担して電話を掛け、実際に身代金を運んだのも俺たちだ。二人の誘拐は、前日の晩に渡嘉敷と瀧澤がやった。」
「初めから殺害する心算だったんだろう。」
「あのときは、彼らが妹を殺した犯人だと思っていたからな。」
「身代金はどうしたんだ。」
「能登島の廃校舎の手配の時にかかった費用、土地代だとか、その他諸々に充てさせて貰った。実際どのように使用されたかは、瀧澤しか知らないけどな。」
「中田を殺したのはその後だな。」
「ああ。許してくれと泣きつかれたが、容赦なく撃ち殺してしまった。用は果たして貰ったからな。」
「大谷の殺害は。」
「それは、俺は知らない。渡嘉敷が黒沢会の三村に頼んで殺って貰ったんだと思う。」
「県警の元西を襲ったのも三村だが、依頼は渡嘉敷からか。」
「多分、そうだと思う。俺はそこには無縁だ。」
「しかし、私たちがこの前会った後、君は一応調べてみる気になってくれたんだな。そのことに関しては嬉しく思うよ。」
「俺はただ、瀧澤に疑問を抱いただけだ。こんな重罪の殺人事件によく協力する気になったな、と思ったんでね。一般人なら、間違いなく話を持ちかけられた時点で、警察に通報する筈だから。」
「渡嘉敷について、新しく分かったことは聞きたくないか。」
「興味はないね。どっちにしろ、あいつも俺も死刑は確定だろう。あの世で会ったときに全てを問いただしてやる。」
 と、青木は言うと、力なく笑った。
「今はただ、俺の過ちで殺してしまった5人に、心の底から謝りたいとだけ思っている。謝っても元には戻らないのも知っているが……それだけだ。」
「……このまま順調にいけば、初公判は今月中に執り行われると思う。死刑は免れないかも知れないが、一応、情状酌量を申し出てみるよ。」
 と、武井は言って、取調室を出た。
 青木は一人、部屋の中で涙を流していた。

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