十五年越しの殺意(外村駒也)完 ページ:4 「鈴木、お前はどういう訳で、渡嘉敷に加担したんだ。」 渡嘉敷が二階へと上がっている間に、青木は鈴木に向き直って聞いた。 「俺か。なぜわざわざそんなことを聞く。」 「別に構うまい。」 「まあ、そうだな。早い話が、同級生のよしみだ。俺たちは、同じ中学を出て、同じ高校に進んだ。大学は、俺は警察学校に進んだから別々になったがな。」 「それだけで、渡嘉敷につくのか。刑事になったものが犯罪に手を染めるなど……。」 「犯罪者が言う言葉じゃないな。まあ、いいだろ。渡嘉敷の麻薬の取引には、俺も参加していたんだからな。」 「……そんな馬鹿な。」 「当時は、俺は捜査四課の所属だったから、麻薬の取り締まりは俺が担当だった。だが、渡嘉敷と会って加担させられたんだよ。まあ、自ら望んで加担したがな。俺が真相を隠したから、世に知られない事件になったという訳だ。」 と、鈴木は言った。 「まあ、そんな話はどうでもいいだろう、今川。」 渡嘉敷の声が、階段から聞こえてきた。 「君にすばらしいものを見せてやる。君が15年間追い続けてきたものだよ。」 渡嘉敷はそう言って、自分の後ろを示した。 「お前は……、瀧澤。」 「そうだ。15年間探し続けた仇敵だろう。どうだ。今の気持ちは。」 言われるが早いか、青木の手が腰に飛んだ。 「おっと。銃には手を触れるんじゃないよ。」 青木の頭には、猟銃が突きつけられていた。 「これは、俺の私物でね。ちゃんと許可を取っている。知ってると思うが、俺は秩父の狩猟グループに所属していてね。一応それなりの腕だ。実感してみるか。」 と、渡嘉敷は言うと、銃の引き金を強く引いた。 銃声が響いたが、青木は倒れてはいなかった。 「ははは。ただの威嚇だよ。まだ、話すことはたくさんあるだろうからな。まあ、流石に次の一発は出るだろうから、その心算でいろよ。」 青木の額からは、汗が滝の様に流れ出た。 「おや、お前でもびびることがあるのか。面白い。」 渡嘉敷の言葉に、鈴木と瀧澤が笑った。 「何も遺す言葉はないのか。ないなら消えて貰うが。」 「なぜ俺を殺す必要がある。」 「それは簡単だ。お前が俺たちに牙を剥いたからだ。他に何の理由がある。」 「初めから殺す心算だったんだろう。その理由を聞くまでだ。」 「死に行く人間に理由などいるのか。お前の価値はもうないんだ。今までの犯行を行う為の手駒として必要だっただけで、栗原一人なんか、俺たちだけで十分だ。それに、お前がいつ裏切るかも分からなかったからな。今みたいに、真実を知ったら必ず瀧澤を殺しにかかることは予測できたさ。」 「そうか。用無しの捨て駒か。」 「そうだよ。お前は所詮、俺の手の中で踊らされてただけだ。そのこと自体に気づかずにな。」 「やはり、武井警部が正しかった訳だ。あの人の推理は、何一つ間違ってはいなかった。」 「残念だったな。今となっては、その武井警部に助けを求めることも出来ない。哀れだ。もう知るべきことは知ったな。」 「……ああ。」 「これで終わりだ。向こうに行って、妹と一緒になりな。幸せだろう。」 次の瞬間、銃声が2発響いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |