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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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「お久し振りです、岡部刑事。」
「あ、こんにちは、杉山さん。今入って行ったのが、鈴木の車ですね。」
「はい。ずっと目を離さず尾行して来たので、すり替わる暇はなかったと思いますよ。」
「あとは、青木だけだな。」
「一体どういうことですか。青木もこちらへ向かっているのですか。」
 と、杉山が不審な目つきで聞いた。
「今さっき、武井警部から連絡があって、警部と小川刑事がこちらへ向かっているそうです。警部の話だと、青木の行き先は、間違いなくここだと……。」
「そんな確信のない話……。間違っていたら、どうする心算なんでしょうか。」
「分からない。ただ、今回の一連の事件は、全部推測でしかないんだよ。その推測が全て正しかった。今回も、警部の勘を信じようと思う。それに、警部は俺たちに内緒で、津野刑事に何かの捜査をさせているみたいだ。だから、証拠がないとも限らない。」
 と、岡部は言った。
 二人が会話をしているそこへ、河西刑事が息を切らしてやって来た。
「今、裏口の方に銀行の車両がやって来たんですけど……。」
「何だと。もう中に入ったのか。」
「ああ。もしかしたら、俺の予想に過ぎないが、青木は既に殺害されていて、渡嘉敷と鈴木は海外に高飛びする心算じゃないのかな。」
「とにかく、出て来たときに尋問するしかない。今は銀行側に……」
「今、電話してますよ。」
 そう言ったのは杉山だった。
「はい、こちらはみずほ銀行三鷹支店ですが……。」
「もしもし、こちらは警視庁の者ですが、先ほど渡嘉敷、もしくは倉渡と名乗る人から、何かしらの依頼がありませんでしたか。」
「はい。それなら渡嘉敷様から、3億円を全額ユーロで自宅まで運んで欲しい、という依頼を受けましたが。」
「それは、今から何分ほど前の話ですか。」
「2時間ほど前ですね。30分前に準備がやっと整いましたので、それから車をお出ししましたが……。」
(30分前か。ちょうど着く頃だ。やはり渡嘉敷は高飛びが狙いなのか。)
「ありがとうございます。」
 杉山は電話を切ると、すぐに武井に掛け直した。
「武井だが、杉山君か。」
「はい。急を要する連絡なのですが、渡嘉敷が3億円をユーロで銀行から引き落としたそうです。先ほど、その車両が渡嘉敷の自宅に入りました。」
「高飛びの準備だ、という判断か。焦らなくてもいい。渡嘉敷を自宅から出すな。それから、車両が出て来たら、事情を説明して貰え。家の中の様子なども詳しくだ。」
 武井はそれだけ言って、電話をあっさりと切ってしまった。
 事態は急を極めている。岡部たちの緊張も限界の域に達していた。

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