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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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「警部、大変です。青木の姿が見えなくなりました。」
 武井が青木と接触してから、3日後のことである。
 青木を見張っていた吉岡から電話で連絡が入った。
 武井は、部下に命じて手分けして、青木と渡嘉敷の監視を行わせていた。
 清水に関しては退院した元西が、県警の鈴木は、同じく県警の杉山刑事が担当していた。
「渡嘉敷の方はどうなってる。」
「まだ動きはありません。青木宅を張っていた内の数名を、渡嘉敷の監視に廻した方がいいですか。」
「一応、そうしてくれ。君は、警視庁の方に戻って来てくれよ。」
「青木が動きを見せたようですね。」
 電話を切ると、小川が話しかけて来た。
「そうなんだよ、ガワさん。青木は恐らく、渡嘉敷に自分の命が狙われていることは知らないだろう。このままでは、彼の命が危険だ。早急に対策を施す必要がある。」
「青木の行き先はどこでしょうか。」
「青木が私の話を信用して、瀧澤について調べたとしたら、石川県の和倉まで行って、瀧澤を殺しにかかるかも知れない。」
「渡嘉敷もどこかで動く筈ですね。」
「ああ。渡嘉敷の今回の事件の動機には、自分の保身と同時に、異腹の兄弟である瀧澤を、警察の手から守ることも含まれているのは知っての通りだ。すると、青木が瀧澤を殺そうとしたら、渡嘉敷はその前に青木を殺すだろうね。」
「逆に青木の狙いが栗原にある可能性も残っていますね。」
「渡嘉敷は、今までの事件の推移からも分かる通り、かなり慎重な性格だ。慎重すぎると言ってもいい。それに痺れを切らして、青木が単独行動に出た可能性もあるだろう。その場合、私が彼に話した内容は全くの無意味だったと言うことになるがな。」
「5月21日の『M高、MK』がミスディレクションだった恐れもありますからね。その場合、青木は予定通りに栗原の殺害を実行しようとしていることになります。」
「どちらにせよ、青木の行き先が分からないでは、手の取りようが……」
 武井の電話が再び鳴った。
「県警の杉山です。鈴木刑事が渡嘉敷の自宅へ向けて、神奈川県警を出ました。」
「尾行している最中か。」
「はい、そうです。そろそろ三鷹の渡嘉敷宅の前なのですが。」
「分かった。岡部君たちが、張り込み中だから、混ざってくれ。それと、車の中にいるのは、鈴木一人だな。」
「はい、確かに間違いありません。」
「尾行、撒かれないように頼むよ。最後まで気を抜かないでくれ。」
 そう言って、武井は電話を切った。
「ガワさん、今から渡嘉敷宅に行こう。青木の向かう先は、間違いなく渡嘉敷の自宅だ。」

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あきゅろす。
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