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十五年越しの殺意(外村駒也)完
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 県警の鈴木刑事の尾行を終えた河西は、鶴見の清水宅へと戻った。
 つい15分ほど前、岡部に連絡をとったときに、鶴見に戻って、清水宅捜索に回ってくれ、と言われたのである。
 もう一人、鶴見に残っていた村川刑事が、既に捜索の許可を取っていた。
「尾行の方はどうだった。」
 と、村川が聞いた。
「まあまあだ。大した動きは何一つ見せなかったね。かえって不気味なほどだ。恐らく鈴木っていう県警の刑事は尾行に気づいていたけど、そのまま県警に戻ったから、撒く必要は無かったんだろう。」
「その話だと、鈴木と清水は二手に分かれたのか。」
「ああ。清水の方は岡部が追ってるよ。ところで、よく家宅捜索の許可を取ったな。本来なら違法行為だぞ。」
「管理人に警察手帳を見せたら、すんなり通して貰ったよ。権力には弱いタイプの人間だな。」
「そうか。何か証拠品は出てきたか。」
 と、河西は聞いたが、村川は笑って首を横に振った。
「きれいに処分されたね。まあ、武井警部の推理が正しければ、県警の鈴木刑事が絡んでるんだろ。そしたら、証拠などをわざわざ残してくれたりはしないさ。」
 と、村川は一蹴した。
「……お前は、鈴木刑事が事件に関わっていると思うか。」
「それは、今は判断しかねるね。神田部長は、県警の人間と今回の事件は無縁と考えているだろう。一方の武井警部は、関連があると踏んでいる。個人的には、どっちでも構わないよ。ただ、将来の出世を考えると、神田部長についた方が良いだろうがね。」
「そういう意味で聞いたんじゃない。アリバイなども考えた上で、客観的にどう判断するか、だ。」
「なるほど……それなら俺は、鈴木刑事は犯人じゃないと推測するよ。調べた限りでは、鈴木にアリバイはあるんだろう。だから、実行犯ではなく警察と犯人のパイプ役である、というのが武井警部の推測の筈だ。だが、証拠が一つもない現段階では、疑っても仕方がないと思うね。」
「……疑わしきは罰せずというのか。それは裁判官の原則だろう。俺の考え方は違う。確かに今までは、俺もお前と同じ考えだったが、証拠がなくとも、鈴木刑事は疑ってしかるべきだろうね。」
 と、河西は言った。
「どういう理由でそう思うんだ。」
「まだ、理由は漠然としている。だが、岡部と共に尾行をしていたときに、彼がいかに武井警部を信用しているかが分かったのさ。彼らの警部に対する誠実さを見て、俺も武井警部に賭けてみたくなったんだよ。」
 河西の言葉に、村川は憚らずに笑った。
「そんな感傷的な考えじゃ、事件は解決できないよ。まあ、いい。それより、ちょっとこれを見てくれ。」
 そういって村川が指差したのは、カレンダーの1ページだった。
「日にちは……5月21日か。メモ書きには『M高、MK』と書いてあるな。何を意味するんだ。」
「さあな。武井警部のもとにでも伝えれば、間違いなく分かるだろうけどね。」
「他には何か書いてあるか。」
「4月の横に、『SI Bzyh』って書いてあるな。全く読めないが、何かが暗号化されてるんだろう。収穫はせいぜいこれぐらいが限界だな。警視庁に戻ろう。」

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