[携帯モード] [URL送信]

残る爪痕 血脈の果て (薩摩和菓子)完
「笑顔」
己は身を起こすと、少女の元に駆け寄る。
 戦場を背にした少女の体には縦に幾つもの穴が開いていた。その一つは心臓を抉っている。己は気付く。少女は己の身代わりになったのだと。己は必死で少女の体を境界線から引き上げた。傷口が更に引き裂かれた。血はすぐに焼き焦げ、流れる事は無かった。


 目を開けると、傍らにダクラが横たわっていた。その胴体は複数に切り裂かれていた。周りは血の海だった。その中に爪が浮かんでいる。アラシュは気付いた。ダクラはその身を犠牲にして、爪に支配されていた自分を助け出したのだと。彼は必死で流れる血を止めようとしたが、すぐに手遅れだと分かった。ダクラは心臓を抉られていた。



 少女はそれでも微笑んでいる。
 少女を抱き寄せる。
 耳元で囁く声が聞こえる。



 あなたは、あなたでいて。ね。

[*前へ]

13/13ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!