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残る爪痕 血脈の果て (薩摩和菓子)完
「従者」
 書斎に立つ者はいない。しかしその床には人影が落ちていた。机の上では何かが燃えていた。その脇に書き置きがあった。部屋のシャンデリアにはしなやかな紐が掛かっていた。その先端には輪が作ってあった。その内側は石けんで滑りを良くしてあった。ミュールドが首を吊っていた。
 
 ベルゼバブは死んだ。もう己に存在意義は残されていない。潔く己自身の手で己に手を下した。机の上で燃やしたのは爪の第一関節だ。これは首筋に寄生し、二十五年間で頭を作り替える。千年もの間、何世代にも渡って王族の長男に受け継がれ、ベルゼバブの復活を支援した。その使命は己の代で達せられたが、まもなくして人とエレの手によって葬られた。唯一の脅威となる神器を滅ぼそうとして、己の身を滅ぼしてしまったのだ。世界をガゼルとベルゼバブだけで制圧する計画は失敗に終わった。もう己に思い残す事は無い。ミュールド=ニルシュト
 追記。第五次トグレア戦役にガゼルが参加した事で、世界的にガゼルに対する信用は高まっているはずだ。ガゼル自体がガゼルを統治出来るようになれば、人間との共存も出来るかもしれない。 

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あきゅろす。
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