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残る爪痕 血脈の果て (薩摩和菓子)完
「公王」
三日間空中砲台に繋がれていると、下の方でこの世のものとは思えない咆哮が聞こえた。耳をすぐさま覆いたくなる、下手すると平衡感覚まで狂いそうになる程の怪音波だった。それに続いて小さな物体が自分の周りを幾つも擦り抜けていく。頭上で人間のどよめき、それに混じって空気が細い穴を抜ける音がすると、ダクラは腕の支えを失った。空中砲台が急降下していると気付いた時には、ダクラの全身は地面に強く叩きつけられていた。息が詰まる。背中を激痛が走った。しかし死んではいない。ガゼルの体はこの程度の衝撃で死ねるようには出来ていなかった。死ねない苦しみにのたうち回っていると、頭上から声がした。複数の男たちが口論している。使用言語はワテクスだ。
「あれを見ろ」
「皆、近づくな」
「撃て」
「よせ、撃つな 様子を見るんだ」
撃つ。何をだろうか。自分の置かれた状況を現実として把握出来ずにいると、足音が近付き、ダクラの目隠しを外した。久しぶりの光が視界に溢れたが、慣れると自分の周囲が目に入る。
自分は太陽を背にした男たちに取り囲まれていた。逆光で男たちの顔は見えない。皆ダクラを無言で見ている。
どうしたのですか。言おうとしたが、唇が震えるだけで終わった。恐怖のあまり言葉が出なかった。自分はこれから何をされるのだろうか。想像すら出来なかった。自分で自分の体を抱き、目を瞑り、自分の世界に篭もろうとする。
「落ち着いてくれ、俺達は敵じゃない。俺達は帝国軍じゃないんだよ」
 大丈夫だ、大丈夫だ。心配は要らない。きっと今まで怖い目にあってきたのだろう。そこまで疲労するもの無理も無い事だ。
労わりの声を掛けられ、張り詰めていた緊張の線が切れた。
「本当ですか」
 久しぶりに出した声は、弱々しく擦れていた。
「ああ、そうだ」
 男はゆっくり肯定すると、他の人間にダクラの手当てをするよう指示した。
「ありがとうございます。自分はダクラといいます。貴方の名前を伺ってもよろしいですか」
「ヴェスヴィオス・トスキールだ」
彼はトスキール公国第十三代公王だった。

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あきゅろす。
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