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残る爪痕 血脈の果て (薩摩和菓子)完
ネタバレ有りバージョン 「自演乙・著作権法違反審議会」(加筆の余地在り)
証拠品が台車に載って来た。それは一抱えほどもある段ボール。議長が段ボールの中身を取り出した。
「これは薩摩和菓子氏の本棚にあったライトノベルです。中には、彼があまりにも影響を受け、他者の視線から見ればパクリ同然の箇所、そのパクリ元と推定される本が入っています」
言いながら、段ボールから本を二冊取り出した。
「例えばこれとこれ。谷川流作『涼宮ハルヒの分裂』、三上延作『山姫アンチメモニクス』。これらの作品の中で、男だと読者が認識するように誘導したキャラクターが実は女だったと明かされる場面があります。彼の作品にも似たような試みが見当たる」
「つまりダクラがそのキャラクターだったと」
「ええ。しかし手法があまりにも稚拙です。地の文での一人称が『自分』、作品の中で最年少にすることで会話文の一人称『私』をさも不自然ではないかのように取り繕っている。しかも家族構成の説明の際に自身からの繋がりを描くという、明らかに不自然なことをしているのです」
「ミュールドにダクラを『末っ子』と呼ばせているのも、普通は『娘』だよね」
「しかも、性別が逆なだけで似たような、つまり見た目が女、実は男というキャラクターが登場する作品も彼の本棚の中にあったのです」
言いながら段ボールから別の本を取り出す。
十文字青作『薔薇のマリア』。薔薇という言葉から、BLの臭いを感じる。和菓子氏の蔵書にはこんな本もあったのか。
「さらに問題なのはそのキャラクターの名前がマリア=ローズとなっていることなのです」
「ちょっと待て。それはつまりダクラの偽名」
「そう。BLを意味する薔薇を、GLを意味する百合に置き換えただけ」
「これは酷い」
「この程度で絶句していたは先が持ちませんよ。次はこれです」
中村恵理加作「ダブルブリッド」
三上延作「天空のアルカミレス」
「前者には見た目が大まか人間で、異常に高い五感感度、精神力、身体能力を持ち、被っている人の皮を脱ぐことで本来の力を最大限に発揮する種属『アヤカシ』が、後者には同じく人間の外見、高い身体能力を持ち、強大な武器に適合することで更にパワーアップする種族『テリオン』が、それぞれ登場します」
「ガゼルそのままじゃないか」
「まだです。他にも、前者には人間とアヤカシの混血『ダブルブリッド』が、後者にはテリオンと同じく強大な武器を操れるよう調整された人間『アルカミレス』が、各作品の主人公として登場します」
「それがアラシュという訳か。二つの作品から、二つもとは。和菓子氏は節度というものを知らないのか」
「まだまだです。重大な事に、彼は小説の結末をほとんど『ダブルブリッド』から取っているのです」
「設定のみならず結末まで」
もう議長以外は感覚が麻痺してしまっていた。
「精神を汚染する兵器に乗っ取られた主人公から兵器をヒロインが引き離し、ヒロインの最期で幕が閉じる。全く同じ。寧ろその死因は、相討ちで無い『ダブルブリッド』の方が上です」
「劣化コピーだな」



〈続く。更新されるまで〉

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あきゅろす。
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