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残る爪痕 血脈の果て (薩摩和菓子)完
「生存」 遠征四日目 午前一時五分 ヤトエリアス
部隊はトースとノース州の境を超えた。
もうガゼルは追って来ない。
肩に張り詰めていた気を抜く。しかし実質は、〇時半あたりからガゼル等の攻撃が、なんと言葉で表現すれば良いのか、緩くなっていた。傍目にはよく分かりづらいが、爪による斬撃を受け止める大剣に加わる衝撃が、ガゼルが迫り来る際の圧迫感が、全体的に軽くなっていた。確かに二人の隊員、ダクラとアラシュによる効果的な攻撃で再起不能になるガゼルも多かったのだろうが、個々のガゼルがそこまで簡単に疲弊した筈は無い。短時間集中タイプではあるが、疲労感を精神力でシャットアウト出来ると聞いたこともある。
正直腑に落ちないが、見たところスペクタ監視官にはあまり訝しんだ様子は無い。どことなく悔しそうには見えるが。
後ろを振り返る。満身創痍の者ばかりだが、死傷者はいなかった。悲劇を繰り返さずに済んだのだ。
「部隊は撤退したのだから、私はもう用済み。先に帰らせて頂く。フューラーシャフトの者達がどういう始末を下すかはよく分からんが」
傍らにいたスペクタ監視官は、徐に口を開くと、共通語で言った。そして言い終わる前にオルを手綱で操り、部隊からの距離を開いていく。
きっと母国に勝手に帰ってしまうのだろうと察せられたが、押し留めたりはしなかった。将軍の意向もそうだろうし、帝国使節団の処罰にしても、帝国側で十分にやってくれるだろう。ノメイルが特に手を下すことは無いのだ。

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あきゅろす。
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