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残る爪痕 血脈の果て (薩摩和菓子)完
「幻影」 遠征三日目 午後十一時五十七分 アラシュ
加速させながらも微調整を施し、ガゼルの爪を掻い潜りながらも頭に命中するようなコースに導く。
如何なる場合に於いても、この砂袋を破くことは出来ない。布袋の余り自体はあったが、上下に激しく運動するオルに予備を載せることは出来なかったし、途中で降りて砂を詰め直すことも出来ないからだ。
半端ない重さの砂袋を振り回し続けて、手が乳酸漬けになる。この苦痛が何時までも続くように思われた。
そういえば、部隊の向こう側から、木の圧し折れる音や、石の砕ける音が絶え間なくする。これがあのダクラの、破壊の産物なのだろうか。疲れとの相乗効果で、意識が飛びそうになるが、辛うじて、抑え付けた。

日付が変わったかもしれない、疲れ、ぼやけ始めた眼の片隅に、何か、黒いのか、物体が部隊とは別方向に走っていくのを捉えた、黒いのはマントだったようだ、顔が見える、こっちには気付いていない、そしてその顔は俺が五歳の頃、トースの森から逃げ出す前、見た、最後となった、
父親の姿だった。

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あきゅろす。
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