[携帯モード] [URL送信]

残る爪痕 血脈の果て (薩摩和菓子)完
「恐怖」 遠征三日目 同時刻 ヤトエリアス
私は今まで幾度かガゼルと戦ったことがあり、また、先程本人から断りがあったが、私はダクラ隊員の動きを見た時、言葉を発することが出来なかった。
高速で部隊に迫り来るガゼルに接近する、
頭を掴む、
手近な物に叩き付ける、
叩きつけられた物も多くは粉砕される、
ひたすら繰り返す。
ガゼルをも凌駕するガゼルがそこにいた。それを見た、応戦に当たっている他の隊員たちも表情が硬くなっている。ガゼルの数が減っていることを素直には喜べないのだろう。
何故なら、ダクラはどのガゼルよりも強く、且つ危うい。敵・味方の線引がとても危うい。部隊に味方して、ガゼルを倒しているダクラもまた、ガゼルなのだから。
どうしても、理性で抑え付けても、ダクラが敵に回ったときのことを想像し、震え上がってしまう。今にも手にしている大剣を落としてしまいそうだ。辛うじて、自分の死に対する危機感で大剣を握り締める。
五十過ぎた老体の所為であまり機動性に優れないながらも私は、怯んでしまう己と闘い、迫り来るガゼルと戦う。過去私の体験した悲劇を繰り返さない為にも。

[*前へ][次へ#]

21/25ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!