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残る爪痕 血脈の果て (薩摩和菓子)完
「忠告」 遠征三日目 午後十一時二十分 ダクラ
遠方。故郷、ノースの方向だろうか、一羽の鷹が滑空して来る。二百メートル先の鷹の脚には紙が括り付けられている。
部隊出発から二日経って今更か。
隊長宛てだろうと思っていた。しかしその鷹は減速することなく近づいて行き、
自分の顔に衝突しかけた。咄嗟に手で受け止めていなかったら時速二百キロ超の高速移動物体が私の顔に当たっていたに違いない。自分の顔を傷付けかけた鷹を一瞬絞め潰そうかとすら考えたが、紙が括りつけてあったことを思い出し、押し止める。紙を脚から外し、開く。二枚の紙が重ねてあった。一枚目には父の署名がある。
[直ぐにして欲しいことがある。部隊にいる帝国監視官には絶対に伝書鳩を送らせるな。写真を添付したものは特に始末が悪い。…]
写真。先程スペクタ監視官が現像していたものか。
私はテントのもう一端に向けて駆け出した。狭い中に隊員がひしめき合っていて、なかなか進めない。人垣を掻き分けようとも退かす先がない。虚しく空回りする。
あと五メートルというところか。鳩の、羽ばたく、音が、した。

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あきゅろす。
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