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残る爪痕 血脈の果て (薩摩和菓子)完
「現像」 遠征三日目 午後十一時十五分 アラシュ
起き出した隊員たちが支度をしている間、俺は手持無沙汰だった。そもそもヤトエリアスに進言しに行った時点で既に準備を整えてあったのだ。スペクタがせっせと先程撮った写真を現像するのを傍らで眺めていた。興味本位で色々訊いてみる。
「これってあれか。最新の湿板写真機って奴か」
「見りゃ判るだろ」
「やっぱ乾く前に現像しなくちゃいけないのか」
「そうじゃないと湿板写真機にならないだろ」
スペクタが大きな籠を持ち歩いていたことを思い出したので、それについても尋ねてみる。
「そう言えばあんたの持っているあの籠、一体何が入ってるんだ。サンドイッチを入れるには、ちょいとばかし大きすぎると思うが」
「鳩だよ、鳩。伝書鳩だ。分かったならあっち行っ」
終りまで言い終わる前に、先に口出しして遮る。
「で、今焼き増ししているのがその鳩に運ばせるための奴ね。何枚なの」
「二十四枚だ。それがどうした」
「いや。何も。そういえば、この部隊、何時かは分からないが、ぼちぼち出発するだろうから。遅れるなよ」
「そんなへまはしない」
スペクタの撮った写真が、後々部隊撤退の理由を証明してくれるだろうことを思い出して、これ以上は口を挟まないでおいた。
焼き増しの作業が、単純に見ていて面白かったというのもある。

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