War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完 :乱射 “ラストロストリウス二世”の砲撃は攻城本部の直前まで届き、リンドルフ・シュテルプリヒの足下を震わせた。 「どういう事だ。海軍はアルマダが足止めしておくのではなかったのか」 「わかりません。封鎖をすり抜けたのでしょうか……」 最前線の攻城砲が直撃弾を喰い、大爆発した。 「あれ程弾薬庫と砲を離せと言ったのに」 「あ、将軍殿! 我々の開通した穴から敵が出てきました!」 「あぶり出せたという訳だ。よし、殲滅しろ」 精兵の騎兵部隊が一万近く、公国軍に襲いかかる。再び公国の艦砲が着弾し、騎士とトカゲたちは宙を舞った。それをぬうように軽砲部隊と長銃部隊が猛射撃をかける。 「味方に当たったらどうするつもりなんですかね、あの船は……」 帝国の将官が心配するほど、ラインハルト艦隊は所かまわず砲撃をかましていた。恐れをなした帝国軍がゆっくりと崩れ始める。部隊と部隊の間の絶妙な隙をトスキール軍は衝いた。 「全く、何をしているのだ。皆殺しにしろと言っているのに」 「シュテルプリヒ将軍! 背後に新手の部隊です……トスキール軍ではありません!」 「何だと、どのくらいだ」 「約千名、今入った情報によるとほぼ民間人のようです」 「なるほど、レヴォルトか。さてズヘニグはまたもやられたわけだ」 将軍は笑いをこらえられないようだった。そしてそのまま、何も指示を出す様子がない。 「あの、将軍殿……」 「ああ、気にする事はない。民間人の千人や二千人、どうという事はないさ」 「そうではなく、新たな情報が」 将官は回転椅子を無理矢理後ろへ回した。 「奴ら、ネーズル軍を連れてきました!」 レヴォルトの少し後ろから、色とりどりの鎧の大軍が現れた。 「総数三万近くです。やりますか?」 「無理だな」 あっさりと言った。 「撤退命令を出せ。なに、楽しみというものは取っておく方が良いだろう? もうすぐ、いくらでもやれるのだから」 「りょ、……了解しました。各員に伝えろ! 引き潮だ!」 [*前へ][次へ#] [戻る] |