War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完 :懸念 さて、コスク本閣。最初の閣議が執り行われていた。 「陛下、どういうおつもりでしょう。このような若造などを陸将に」 海将のラインハルトが詰め寄る。相手の陸将がこれでは、自分がなめられているようなものだとでも言いたげだ。 「若造とはなんだ! 僕はただの餓鬼なんかじゃないぞ」 いまにも殴りかかりそうな二人を抑えて、宰相はなんとか持ち前の風格で閣議らしい空気を作りだした。 「まあまあ、そのような事でけんかをしている場合ではないぞ……陛下、ローゲン帝国が迫っています」 「わかっている。何度聞かされた事か……」 「ですから、陛下は対応策という物を」 言いつつも、ナイファーはとるべき道は一つだと知っていた。 (戦だけはするまい……) トグレア連邦の中でローゲン帝国に最初に反旗を翻した国、イースラークを見れば結果は明らかである。男たちは皆殺しにされ、田畑は焼かれ、首都近辺は砂漠になってしまった。しかし、若きフェルドランスの思惑は正反対であった。彼にしてみれば、自らの力を試す前に死ぬ事ほど恐ろしい事はないのだ。好戦的な面では、ラインハルトもまた同じである。 神暦一〇〇九年八月十五日。ネイツ王国は完全に消滅し、トルスと言う帝国の一地方となった。その翌日、恐れていたことが起きた。帝国の使者がやってきたのである。 [*前へ][次へ#] [戻る] |