War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完 :弱点 「何て奴だ!」 ルフトツークは驚愕した。風で煽られて気球は不安定になっていたが、彼は化け物を凝視し続けた。化け物の背中から棘が幾つも生え、何かケーブルのようなものがのびている。そのケーブルの先を目で追うと、雲の中へ繋がっていた。 「火力上げろ! 上昇するぞ」 雲の中へ入る。重い空気を押しのけて気球は上へともがき、雲の上へ躍り出た。 「あれは!」 ケーブルの先には空中砲台があった。見た事の無いタイプの砲台であったが、おおよその用途は見当がつく。 「あそこが発令所になっているのか……」 こちらに気付かぬまま、空中砲台は降下を始めた。雲の海に入り、見えなくなる。 「消火急げ、降下するぞ! 公王陛下にこの事を伝えねば」 「上空、ローバスルが旗流信号を出しています!」 「上を狙え、だと?」 「あそこに空中砲台が!」 「あれがコカトリスを操っているのか? 対空散弾銃、持ってる奴は撃て!」 トルカセニレ戦で威力を発揮した花火の改装弾が空へ飛散した。一部は化け物にも当たったが、蜂の巣になってもすぐに塞がれてしまう。その時、散弾の一発が電線を切断した。 「キュアアアアアアアアアアアアアアアアアア」 化け物は絶叫し、動かなくなった。やはり、あれが司令船だったのだ。さらにもう一発が砲台に直撃し、無惨に爆発した。 「やった……のか?」 巨大生物の眼は光を失っていた。白濁した皮膚は蠕動を止めた。そう、全ては終わったのだ。 [次へ#] [戻る] |