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War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完
:恐怖
その姿は、レービスから一寸離れた連合軍からもよく見えた。それ程までに化け物は巨大なのだ。
「あれが……コカトリス……」
「帝国軍はこんなものを作ってやがったのか!」
そいつは翼を羽ばたかせると、空中へ飛び上がった。二列の足を波打たせる。
「こっちに来るぞ!」
「うわあっ!」
風圧に皆が眼を瞑り、そして、顔を上げたときにはすぐ目の前に化け物の姿があった。
「い……嫌だ……」
「やめてくれぇえええええ!」
ヴェスヴィオスにはよく見えなかったが、化け物の皮膚は蠢き、波打っていた。誰でも、これを見れば吐き気を催すだろう。そいつは口を大きく開いた。
「ギャアアアアアアアアアアアアア!」
人の叫ぶような声とともに、閃光がほとばしった。熱風。爆音。横を見ると、先ほどまで兵たちが展開していた場所はただの空き地になっていた。連合軍は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
「そ……槍士隊とレヴォルトが蒸発した!」
「こんなの反則だろう!」
「乱れるな! 冷静になれ、防御陣形だ」
今や残っているのはトスキール軍とトルカセニレの義勇軍だけだった。といっても何が出来るわけでもない。化け物との睨み合いが続く。
「砲士隊、撃て!」
数多の軽砲が火を吹き、怪物の体を貫いた。肉片が飛び散り、ぼたぼたと落ちる。腹の部分は脆いようで、幾つも風穴が空いた。化け物が悲鳴を上げる。
「やった!」
だが、……そう。勿論、旧世界の怪物はそのように甘いものではなかった。穴はみるみるうちに修復され、元通りになってしまったのだ。
「撤退! 急げ、退避しろ! 逃げるんだ!」
フェルドランスの命令で、公国軍は一挙に走り出した。


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