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War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完
:神話
夜、カレオロトニムの森の中でヴェスヴィオス、ハイビンダー、フェルドランスの三人が焚き火を囲んで干し肉のスープをつついていた。長旅の末に残った最後の食料である。
「あの、公王陛下、聞いてもよろしいですか?」
「なんだ」
「どうして、我々はここへ来たんですか? わざわざレービスなんて言う僻地まで」
「そうだな、俺も気になっていたところだ。トグレアを解放するためにトスキールを離れたのは分かるが、ここはネーズルだろう?」
「あの、レービス火山に何かが隠されている」
干し肉を噛み切ろうと苦戦しながらヴェスヴィオスが言う。
「兄さんは神話学者で、色々な伝説について研究していたんだ。その兄さんがレービスに何かがいる事に気付いた。気付いた途端に、殺された。帝国軍が何としても隠そうとしたものがレービスにはある」
「へえ、神話ねぇ……あんたも、そんなものを信じるのか」
「といっても、陛下、神話ってどんな話なんですか?」
「そうか……フェルドランスは世代が違うからな。今ではもう語られなくなってしまったのだろう」
「教えてくださいよ、陛下。ラフィレイド様に聞いておられるのでしょう?」
「ああ」
ヴェスヴィオスはやっと肉を呑み込むと、語り始めた。
「千年以上前、人々はとても豊かな生活を送っていた。犯罪も災害もなく、世界を創った神であり人々の母、ストラートスもその様子を見て喜んでいた。だが、悪魔はそれが気に食わなかった。同じストラートスに創られながら、繁栄を得られなかった悪魔は人類を妬み、まず“争いの種”を人々に植え付け、人々が互いの豊かさを憎み、互いに疎みあうのを待った。次に悪魔は西の海から“コカトリス”を遣わした。コカトリスは人々の家を焼き、田畑を焦土に変え、人々を食った。悪魔の計画通りなら、人々は互いの不幸を笑い、自らを滅ぼすはずだった。だが、一人の靴屋の少女が呼びかけ、人々は共にコカトリスと戦うことを決めた。少女の名はタクティナ・トスキールと言い、彼女はストラートスに人々を救う使命を受けていた。人々は苦戦を乗り越えてついにコカトリスを追い詰め、タクティナの槍がとどめを刺した。人々は救われたが、町や畑は焼き尽くされてしまい、昔のような豊かな生活に戻るには長い年月が必要だった。人々は巨大な連邦を作って互いに助け合い、それぞれ構成国の当主にはタクティナの子孫たちがなった。タクティナがコカトリスを倒したことを記念に神暦が始まり、現在に至るまで、人々は豊かな生活に戻る途中なのである」
ヴェスヴィオスは一気に言い終えた。昔よく暗唱させられたものである。
「陛下、その話知ってますよ。子供の頃爺さんに、コカトリスに喰われるぞ!って良く脅されました」
「ああ、あの話か。あれって神話だったのか?」
ヴェスヴィオスは腰に差していた槍を火にかざす。
「こいつがその槍だ。これが存在する以上、この神話の信憑性は高い」
「なるほど。では、そのコカトリスが山の中に隠されていると? そういうのか?」
「ああ。確信は持てないが」


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