War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完 :旅路 コスク上空、雲の合間から見慣れない球形の飛行物体が姿を現した。 「やっと着いたか。トルカセニレから長かった……」 「これで実用性が認められましたね、ルフトツーク殿」 ローゲン直輸入のアプゾルートは燃料が調達できず、もう飛ばす事が出来なかった。そこで、代わりに開発されたのがこのトスキール型気球“ローバスル”である。バーナーにより空気を加熱、比重を軽くする熱気球だ。水素ガスを使用したローゲンの空中砲台より遥かに安全性は高いが、いかんせん出力が低いので爆弾など到底積めず、偵察飛行が限界である。 「あれっ、コスクがボロボロじゃないか」 「酷いですね……公国軍だったらこんな事はしませんよ」 「おい、あれを見ろ! ……何やってるんだ?」 壊滅したコスク市の正面入口に軍隊が整列していた。トスキール陸軍が旅団隊形をとっている。 「せっかく僕らがここまで来たってのに、どこに行く気だ? 急いで降下しろ!」 空士が三つあるバーナーのうち二つを消火し、機体はゆっくりと落ち始めた。風でゴンドラが左右に揺れる。 「信号弾発射、緑と黄色!」 備え付けられた発射装置で信号弾を撃ち出す。それを見たフェルドランス達は、信号旗を揚げて答えた。 「地上より通信。“ナガタビゴクロウ。コレヨリシュッパツスルガ、ツイテコレルカ”」 「はあああああああ!?」 ルフトツークは床にへたり込んでしまった。 [*前へ] [戻る] |