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War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完
:怪物
「こいつが、一ヶ月前と同じあいつなのか?」
レヴァリーは驚愕した。前に来た時は骨骼と殻しか無かったのに、今は所々に肉がついている。
「化け物だな」
「ええ、その感は否めませんね……本当に使いこなせるんでしょうか」
副官が心配そうに言う。現場の人々は皆畏れを抱いていた。本体に無数に突き刺さった剣が、ゆっくりと波打っている。
「どうやら、あそこに刺さっている剣が起動を妨げている原因のようです」
技師の一人が言った。化け物は苦しみ喘いでいるようにも見える。何人かの技師達が背甲の上に乗って黒光りする剣を引き抜こうと躍起になっていた。
「どれ、俺がやってみようじゃないか」
連絡橋を渡り、化け物の上に登る。足下で皮膚が蠢いているのが分かった。
「気味が悪いな……よしっ」
レヴァリーが柄に手を立てると、剣は身震いした。いや、剣の刺さったこいつが身震いしたのだろう。そのまま力を入れると、剣はするりと抜けた。
「あれ?」
その時、化け物は人間が叫ぶような声を上げた。足下が揺らいだかと思うと瞬く間に成長し、今までぽっかりと穴をあけていた顔が出来上がっていった。
「何て事だ……」
見るもおぞましい顔を持つそれは、いつの間にか完成した無数の足を波打たせ、四方に開く口を目一杯開くと、様々な方を向く幾つもの巨大なガラス玉のような眼でレヴァリーを捉え、咆哮した。
「まずい、停止信号を出せ!」
管制室の操作盤から骨格の核に事前に取り付けておいた制御装置を作動させる。巨大生物は身を捩ると、首を絞められたような声を上げて動かなくなった。


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あきゅろす。
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