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War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完
:誤算
トスキール軍がコスクに到着したとき、市内には一人も人がいなかった。陽動が成功した、というにはあまりに巧すぎる。
「どういう事だ……? 帝国はみんな国境に行ったのか」
「そんな筈はないだろう。奴らの企みがわかるまで様子を見るとしよう」
ヴェスヴィオスは至って平静としていたが、兵たちは状況を不気味がっていた。あれほど士気高揚していたのに、まさか敵が全くいないとは拍子抜けである。
「陛下。ネーズルの、エアフォルク将軍の部隊が総攻撃されている可能性があります。占領部隊を置いて、ネーズルの援護に向かいましょう」
「フェルドランス、どうやらその必要はないようだ」
城壁の覗き窓から外を見ると、コスクは既に大部隊に包囲されていた。森の合間から攻城砲が見え隠れする。
「やられたな」

「全く、わざわざここまで来てやったのに、もうこれで終わりか」
リンドルフ・シュテルプリヒ将軍が不満そうに言う。どれほどトスキールに怒りを抱いているのか、コスク城に目を向けもしない。
「レヴォルトを通じて連絡をするとは、馬鹿どもが。自分達のスパイを潜り込ませたのに、フューラーシャフトが潜り込めないとでも思ったか」
元々市民組織である。どうしても、入隊のときの身分確認は疎かになる。シュテルプリヒは右手をそっと立てて言った。
「撃て」
郊外の森に密かに配備された攻城砲が一斉に火を吹く。放物線を描いた砲弾は市内に直撃し、レンガ造りの民家が倒壊した。部隊が集結していたところにも一発命中し、多くの兵が死んだ。
「殺せ、殺せ、殺せ」
雨のごとく砲弾が降り注ぎ、コスクの美しい市街は壊滅してゆく。中央のコスク城から砲撃があったが、ほとんど被害はなかった。
「殲滅しろ!」

「あーりゃまぁ、こりゃ酷い」
ラインハルトは黒煙を上げるコスクを眺めると、信号旗を揚げさせた。
“ゼンカントツゲキ!”
「嫌な予感がしたんだよ、来て良かったぜ」
「艦長! 前方にローゲン無敵艦隊!」
「何ぃ!?」
巨大艦三隻を中核とする大艦隊。
「しかも、休戦旗を掲げています!」


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あきゅろす。
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