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War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完
:計画
「これは……?」
ヴェスヴィオスにしては珍しく、王宮から持ち込んだ古い書籍を整理していた時のことである。それは彼の兄、ラフィレイド・トスキールが非業の死を遂げた、コスクの王立図書室所蔵の本であった。“トグレア神話における実話性と他国間との比較”。消えかかった金字のタイトルが、これまた珍しく、公王を惹き付けた。その本を開くと、一枚の羊皮紙が舞い落ちたのであった。
『レービス 神器 伝説 帝国の諜報機関』
そんなことが走り書きしてあった。兄が公国一の神話学者であったことは、彼も知っていた。その彼が、神話の本の隙間に、メモを隠していたのである。ヴェスヴィオスの血が騒がないはずはなかった。
「帝国……兄さんが死んだときには、まだ帝国の使節は来ていないはず……」
レービスと言えば、昔アルバートによく似た老教師がやんちゃな公太子にかろうじて叩き込んだネーズルの地名のうちの一つである。疑念が確信へと変わろうとしていたときに、伝令兵に呼び止められた。
「……公王陛下。宰相殿が」
その先を、兵士は言わなかった。ヴェスヴィオスはとうに走り出していたのだ。

灼熱の火口。溶岩が噴き出し、鼻を突く熱風があたりを吹き散らす。黒ずくめの将校は見るからに不快そうな顔をしている。だが、世間一般の帝国将校とは違い、すぐさま現場から立ち去ろうとしている風ではなかった。
「進度はどうなっている」
「予定より一段階早まっています。後はいくつかの技術的な問題をクリアすれば覚醒は目前です」
「これが最後の切り札だからな。失敗は許されない……」
溶岩の中から突き出した岩のような物に、ハリネズミのように剣が突き刺さっていた。
「一刻も早くこいつを叩き起こせ。でなければこの私がわざわざここまで来た意味がない」


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あきゅろす。
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