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War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完
:会戦
「やはり此処だった……」
冬の朝の鋭い冷気が頬を刺す。ネレイデは船首で大きく伸びをすると、公国の艦隊を眺めた。
「さて、あの子はいるかしら?」
「どうしたのですか、姉さん」
ネレイデが振り返ると、弟のネストルが神経質そうな顔をして立っていた。シュネーヴァイス家の長男にしてはいささか優しげな出で立ちだ。
「何でも無いのよ。あなたは早く自分の船に戻りなさい」
「わかりました……」
彼は横付けしてあるメガロドルカス級の二番艦、“メガロドルカス・ギガンテス”へと帰っていった。アルマダの第二艦隊までも投入する。失敗は、許されない。
「面舵九十度、右舷艦砲射撃用意!」
理想的なT字隊形で敵に対峙する。彼女は、全艦に聞こえるような声で叫んだ。
「いい事、殲滅よ! 攻撃するだの、損害を与えるだの、包囲するだのじゃないわ。殲滅するのよ!」

眼下で砲撃戦が始まったのを、ルフトツークは上空から微笑を浮かべながら見ていた。
「うまくやればいいけど……」
後ろでは飛行に不慣れな陸軍兵たちが右往左往していた。本来ならせめて海軍兵を乗せるべきだが、どうにも兵員が足りないのだ。
「二時の方向、敵空中砲台部隊多数!」
「よし、対艦砲籠めぇ!」
ゴンドラから一本の棒が突き出す。一瞬の沈黙の後、特設対艦砲が火を噴いた。反動で機体が左右に大きく揺れる。砲弾は一条の煙を残して艦隊の間を飛び去る。
「外したかっ……!」
だが、帝国艦隊の動揺は大きかった。公国に空中砲台を一隻拿捕されたという噂はあったが、まさかそれが大砲を撃ってくるとは。
「何だ、その撃ち方は。もっと腰を据えて、冷静に撃て!」
敵に指示をされる……それだけで公国兵士には耐えがたい事態であったが、ルフトツークの隣に仁王立ちになっているパイクスタッフに言われると反論ができなかった。
「この一隻だけでも敵の艦隊に匹敵する! 奴らを全滅させるんだ」
第二射が先頭の空中砲台を直撃、爆炎を上げて海へ墜落した。


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