War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完 :合流 増設された防壁の陰から、十数隻の大型船が姿を現した。ネーズル国旗を掲げたガレオン船は、甲板に兵士を満載し、コルトの小さな櫂船の誘導に従って入港し、桟橋に横付けした。 「フェルドランスの奴だ。よかった、助かったんだな」 ラインハルトが胸を撫で下ろす。舷梯が渡され、陸将が降り立った。 「グ……ハッ」 彼は桟橋に倒れこんだ。その後ろから出てきた兵士たちもその上に積み重なる。 「全員、船酔い致しましたぁ!」 船員が声高に叫んだ。 フェルドランスが病室で目を覚ます頃、ヴェスヴィオスとラインハルトはコルトの下町にいた。 「なあ、レオナルド。お前、共通語がわかるんだろう?」 「はあ、少しなら、ですよ」 「それならちょっと通訳してくれ」 公王は薄汚れた居酒屋へと入り、中を見回した。一人の男が、端から四番目の席で、俯き加減に酒をすすっていた。 「名前を聞いてくれ」 「オマエ、ナマエ」 海将が片言のワ・テクスで尋ねる。男は顔を上げてこちらを見据えると、一言だけ言った。 「フォルザイル」 静寂。 「フォルザイル、だそうです。公王さん」 「共通語を教えてほしい、と伝えてくれ」 「はぁ、オマエ、ワタシ、オシエル、ワ・テクス」 フォルザイルはしばらく眉を顰めていたが、合点が行ったのかゆっくりと首を縦に振った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |