War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完
:寄港
神暦千九年十一月六日。エズス諸島最大の島、東島に大船団が現れた。大型船は五十隻以上、小型船は数知れず。その上、空中砲台を曳航している。島の頭領であるドゥルデンは目を疑った。さらに驚くべきことには、一番でかい戦艦から王族らしき人物が降り立ち、彼にこう言ったのである。
「腹が減ったから、飯をくれないか」
しかし、エズス人は根っからの商人である。そう簡単に物を譲るようなことはしない。それは、ヴェスヴィオスも承知の上だった。
「もちろん、タダでとは言わない。ほら、あれ全部あげるからさ」
公王の指さす先には、王室の金庫から持ってきたありとあらゆる財宝があった。無論、その日東島の食糧庫は空になり、この後黄金の島と呼ばれるいわれとなった。結果的に公国の民は空腹という言葉から暫く遠ざかることになるのだが、宰相が取引を見た途端気を失ったのは言うまでもない。