War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完 :友軍 「遅れてすまない! 諸君らの援護に馳せ参じたネーズル国境合同部隊である! 無事かぁ!」 先頭の将校が叫んだ。フェルドランスが手を振って答えると、彼は腰を抜かしてしまった。 「トスキールでは少年が軍を率いているというのは本当であったか」 「ええ、確かに」 トスキール陸軍将軍はウサギを降りると、将校に握手を求めた。 「まだ帝国軍は近くに潜んでいるはずです。撤退の後方支援をお願いします」 「引き受けましたぞ」 総数一万程であったトスキール軍は、増援三万を得て確実に北へと向かった。 「封鎖線を突破しました!」 最後尾の旗艦“ラストロストリウス”でこのセリフが聞かれたということは、トスキール海軍は勝利したも同然であった。その筈であった。 「まずいな、風が南寄りになってきている」 ラインハルトの顔を一筋の汗が流れた。こればかりは、運を天に任せるしかない。後ろを見ると、公王が熱心に羅針盤の仕組みを訊いていた。思わず、海将は笑った。 「よし、そのまま風に向かって進め! 大丈夫! 風は絶対俺達の味方だ!」 「奴ら、どこへ向かうつもりだ?」 トスキールの船団は大きく南へと転針している。まさか、バイデクルトでも襲うつもりか。 「どうします? 向かい風では我が軍の船は動きませんよ」 「それなら、オールでも使って漕ぐんだね! 全く、だからあたしはラティーン・セイルを導入しろと言ったのよ」 だが、南に逃げてくれるなら話は早い。バイデクルトには、弟ネストルが指揮する第二艦隊が待機している。 「伝令のハトを飛ばしなさい。弟に、今すぐ出航しろと」 その時だった。 「あ……提督、風向きが変わりました」 「あら、ほんとね。だったらハトは飛ばすまでもなさそうね」 人命救助を終えた巨艦は、船団目指して動き出した。 [*前へ] [戻る] |