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War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完
:戴冠
太陽は天頂を回り、着冠式の開始を告げるラッパの音が鳴り響いた。
コスク中の人々が、城内に詰めかけた。新たな王の着冠と、新大臣の着任が行われる。国民は期待と不安を抱えて(期待が報われた事は今までほとんどないが)見守っていた。
ヴェスヴィオスは大儀そうに立ち上がると、つぶやくような声で言った。
「宰相、アルバート・ナイファー」
拍手があがった。先ほどの男である。長いひげを蓄え、頭は完全に禿げ上がったこの男は、ラフィレイド時代からの続投となる。彼は政治・外交手腕に長けていて、これまでのトスキール繁栄は彼の功績と言っても良いだろう。
「海将、レオナルド・ラインハルト」
拍手ちらほら。少々粗野で高圧的な人物で、しかし海戦の技術は本物である。
「陸将、フェルドランス」
沈黙。国民は、いや官僚さえも、誰?という表情をしている。
「俺の事か〜?」
衛兵たちの中から、一人の若者が名乗り出た。
「なんだ?」
「子供じゃないか」
その通り、十八、十九の若者である。実は、この少年は知る人ぞ知る軍事の天才で、たいていの兵法書は暗記してしまったほどだ。ただ一つ欠点は、実戦経験がゼロの事である。
波乱を残して、着冠式は終わった。その頃、城内に潜り込んでいた帝国のスパイは報告を送っていた。
「コウオウハムノウ、リクショウハコドモ。オソルルテンナシ」


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