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War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完
:膠着
 戦闘は終了した。ノメイルの飛行部隊により空中砲台は全滅、突如として帝国艦隊は後退した。彼らは狂い立つように沈んだ船の乗員の救助を始めたかと思えば収容出来ない人員を海に投げ戻すという奇行に走り、一通り確認が終わると撤退した。探している人物でも居たのだろうか? 不要と判断され、海を漂流している人々は連合艦隊が救出した。
「素晴らしい働きだった。私から礼を言おう」
着陸したノメイルの傭兵に公王が労いの言葉をかけたが、それが流暢なワ・テクスであることに宰相は腰を抜かした。
「こ、公王陛下! いつのまに……」
「何のことだ? ああ、とある先生に教わった」
ここまで話せるなら、この前の会合まで翻訳者をわざわざ付けていたのは何だったのだと思う。
「今の戦いの最中に練習して、完璧になったのさ」
ヴェスヴィオスは傭兵たちに向き直る。
「君たちのおかげで、見ての通りコルトは無事だ。それにしても、見事な戦いぶりだった」
「いえいえ、ノメイルの傭兵たるもの、任務の完全な遂行は絶対です。これからも有事にはノメイルの傭兵部隊を贔屓にしてください」
答えた傭兵に対し、公王はニコニコと笑っている。
「……なあ、アルバート。今こいつ何て言ったんだ?」
リスニングは駄目なのか。

 小舟を飛び降りて姉の無事を確認するが速いか、その男は殺意を覚えたようだった。
「誰だ、お前は」
長銃を突きつけられたアイグレットであったが、すぐその間にネレイデが入った。
「やめなさいネストル! 彼を殺してはならない」
「姉さん、こいつはトスキールの人間だ!」
「そんなこと関係ないわ」
「でも、こいつは敵だ! 僕らの仲間を殺した奴だ!」
「関係ないって言ってるでしょう!?」
ネレイデはネストルを突き飛ばした。
「じょ、上官命令よ。彼を保護して、帝国へ帰還するわ」
「……了解しました」
小さなランチに彼らは乗り込み、母船へと向かった。アイグレットにはどうすることも出来なかった。この後どうなるのかも想像がつかなかった。帝国へ行く? 僕はこの司令に気に入られたんだろうか? もしかして、公国と、ラインハルト様と戦うことになるのだろうか。だが、今はとにかく静かに従うことが重要であるように思われた。夜の闇の中に、メガロドルカス級の巨大な影が浮かび上がっていた。

「やはり失敗したか」
  ジェノサイドが笑う。それにつられて何人かも失笑した。
「ノメイルの部隊は予想外だった。あれを押さえておくのは東方諜報部の役目ではないのか」
マグニサイドが必死に反論するが、誰も耳を貸してはいない。
「まぁ、貴様の過失があるのも事実だ。その上」
アルサイドが追求しようとするのをジェノサイドが制した。
「計画はどうなっている」
「第二段階に移りました」
「そうか、それさえ成功すれば君を処分することはない」
マグニサイドは深々と頭を下げた。
「諸君、やはり皇帝をこのまま無視しておくわけにはいかない。一時的に停戦状態に持ち込み、その間に計画を実行段階まで推し進める。ひとまずは占領したトスキールの植民地政策に集中するとしよう」

 こうして第四次トグレア戦役は膠着。この後三年間、両国はそれぞれの国策に専念することになる。


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あきゅろす。
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