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War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完
:決闘
「何としても逃がすな! アイフェルの虐殺者を殺せ!」
 逃げ場を失ったトスキール軍に向かって、怒号とともにローゲン軍が猛攻をかける。先頭を行く帝国騎兵隊の中に、勇将レヴァリーがいた。
「敵将を取れば奴らは総崩れになる。一気に突破するぞ!」
騎乗している巨大なウロコトカゲに鞭を打ち、全速力で敵陣を駆け過ぎる。ほとんど抵抗されることもなく、中心部まで辿り着いた。
「出て来い、トスキール陸軍将軍よ! 我こそは、トスキール征伐特命部隊隊長レヴァリー・シュヴァルベである!」
剣士隊が盾で守りを固める中から、一人の少年が進み出た。
「僕がトスキール陸軍将軍、フェルドランスだ!決闘をしよう」
「こ……子供!? 予想以上に幼い……」
「子供じゃない! これでも先週十八になったんだぞ」
そう言うと少年は長剣を構え、レヴァリーに対峙した。だが、レヴァリーは躊躇っている。
「どうした! お前も剣を構えろ」
フェルドランスに促され、レヴァリーもゆっくりと剣を抜く。二人は一瞬の沈黙の後、互いに飛びかかって切り結んだ。

 アイグレットが立っているところのすぐ近くにボレアリスの砲弾が直撃し、舵輪と手すり、ついでに彼の帽子が吹き飛ばされた。
「残った味方の数は!?」
「航行可能なのはクランクハイト、フライハイト、本艦の三隻です」
片腕を抱えた副官がかすれ声で報告する。最早、アイグレット艦隊に戦う力は残されていなかった。だが、彼は師匠の役に立てただけで十分満足だった。
「せめて、一矢報いることができたんだ。後は、うまく敵の注意を引きながら撤退するぞ!」

 いくつかの敵の船影が、中央に向かって集まり始めたのがコスクの桟橋から見えた。陽動は成功したのである。海将ラインハルトは機は熟したと判断した。
「今だ。帆を張れ!」
巧妙に偽装されていた船団が一斉に帆を張り、水面を滑り出した。甲板には、難民を満載している。
「全艦、全速前進! 封鎖を突破する」
ラインハルトの旗艦“ラストロストリウス”は最後尾で船団の指揮を執る。巨大な三角形の帆を張った一等戦艦は、漆黒に船体を塗りあげ、髑髏の旗を掲げていた。海将は突然、公王の隣で叫んだ。
「うおお!! 昔の血が騒ぐぜ!」
「おいレオナルド、目的を忘れるなよ……」


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