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War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完
:同盟
「お会い出来て光栄です。では、私の話はいくらか聞いていらっしゃいますでしょうか」
 改めて、ナイファーとオドグは向かい合って席に着いた。
「もちろん、聞き及んでおります。既に我がネーズル軍は国境線からトスキールに向けて進軍中です」
「では、共に戦って下さるのですか!」
「ええ。帝国は我々共通の敵です。しかし、こんなところにまで配下を潜り込ませていたとは、思いもよらなかったでしょう……ご迷惑をお掛けしました」
「いえ、気付かなかった私の失態です。我々と同盟を結んで下さりますか」
「喜んで、お受け致しましょう」
ここに、ネーズル・トスキール戦時同盟が締結されたのだ。

「取り舵20度!敵に向けて突っ込め」
 ヴァイスハイト号は敵の直前で変針し、巨艦に横付けした。木と木がキシキシと擦れあう。二人の艦長は同時に叫んだ。
「撃てぇ!」
「撃てェ!」
メガロドルカス級の片舷六十四門の主砲と、フライハイト級の片舷八門の主砲が火を噴く。両艦は船体をぴったりとくっ付たまま激しい砲撃戦を続けた。ヴァイスハイト号のメインマストは文字通り粉々に吹き飛び、帆はもはや原形を留めていない。ところが、船体には傷ひとつなかった。あまりにも舷側が低すぎて、巨艦ボレアリスの主砲はその上を通り過ぎて行ったのだ。やがて両艦はすれ違い、煙が晴れるとさしずめ切り結んだ剣士のように互いを睨んだ。アイグレットが船員に指令を出す。
「メイン・マスト引き起こせ! それと、船倉の錘を捨てろ」
もはや只のタライと化していたヴァイスハイト号に隠してあった大きな帆が揚がり、窓から次々と錘が投げ捨てられると、浮力を得た船体が水中からゆっくりと姿を見せ始めた。この様子は、ボレアリス号からもよく見えた。
「あれは……」
みるみるうちに、海中から一隻の二十四門艦が姿を現したのだ。ネレイデは驚愕した。
「……やるじゃない! 小型艦じゃなかったのか……そのやり方、惚れたわ」
「シュネーヴァイス艦長! 右舷第七層に甚大な損害を受けました。すでに浸水しています」
「わかったよ、それなら左舷の装甲板もぶち抜きな! こんなところで沈むわけにはいかないんだよ」
巨大な戦艦はゆっくりと右に傾き始めていたが、左舷の下部に穴が空けられると、左側にも浸水してバランスを取り戻した。
「久しぶりに楽しめそうね……180度回頭! また弾を込めな!」

「アイグレット艦隊はどうか?」
ヴェスヴィオスにはよく見えないので、代わりにラインハルトが解説する。
「あのでかい奴から煙が出てます。うまくやってるんでしょう……隙を見て我々の船団も出港します。公王さんも、早く乗って下さいよ」
「オレは最後の船に乗るよ、レオナルド。公王が先に逃げるなんて、本末転倒だろう?」
ヴェスヴィオスは、海軍の船に次々と乗船して行く国民を眺めている。
「それなら、俺様と同じ船になりますな」
ラインハルトも公王の隣に立ち、大小多数の船が待機する港を見渡した。
「頼まれたからには、全員脱出させてご覧に入れますぜ」


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あきゅろす。
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