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War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完
:失墜
 ある小さな漁船がトスキールとローゲンの南境であるロック諸島近海を航行していると、霧の中から巨大な影が現れた。
「なんじゃあ、ありゃあ?」
老人の船を押さえ付けるような航路をとったそれは、どうやら戦闘艦らしかった。あまりに大きく老人には壁のようにしか見えない。船員が何か言っているようだったが、内容は聞き取ることが出来なかった。
「あん?なんだって? ワシゃトスキールのしがない漁師じゃ!」
その瞬間、壁の中から赤い閃光が瞬き、音速の弾丸が漁船を直撃した。粉々になった残骸を踏みつけるようにその船は黒い水面を滑り、霧の中へ消えた。

 神暦一〇〇九年十月二十八日。トルスの前線基地に空中砲台の姿はなかった。
「まさかお前が攻撃しようとした町が四年に一度の花火大会だったなどと知る由もなかろう」
カリギュラが不気味な笑みを浮かべながら言う。ほとんど涙目のルフトツークは机を殴った。
「あんた、本当は、知っていたんじゃないのか」
「まだ言うか、ルフトツーク。お前は更迭だ。顔を洗って出直してこい」
仲間を失った青年は、うなだれながら城を後にした。
「少し、可哀想だったんじゃないですかね」
レヴァリーはその悲しげな背中に若干の同情を覚えていた。
「今の奴の姿を参謀本部が見れば、我々に対する評価も変わるだろうさ」
「ならば、援軍が来るかもしれないですね。例えば、無敵艦隊アルマダとか」
「フューラーシャフトの参謀どもがそう簡単に動くかね」

 その頃、コスク陸軍演習場。新たな騎士団の養成のために隊長のベラドンナは騎乗訓練を行っていた。時間も人手も足りないトスキールでは、兎に乗った事すらない者が騎士隊に抜擢されていたのである。
「あんたたち!そんな事では背骨を折るよ」
その時、港でラッパが鳴り響いた。宰相が隣国のネーズル王国に交渉に向かうというらしいが、どれくらいの効果があるものかは怪しいものだが。それより今は、一刻も早く帝国に対抗できる兵力を育てなければならないのだ。彼女はもう一度、部下たちに城内5周を指示した。


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