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War Chronicle of Toskiel(紺碧の空)完
:流刑
 ついに、流れが何もかも飲み込み始めた。重い装甲服を着けた帝国兵たちは次々と沈んでゆく。一方、海兵隊はなんと元から大きな筏の上に立っていたのである。地面深く打ち込まれた杭に係留されていて流されることはないのだ。銃士隊の斉射でローゲンの歩兵たちは谷底へ追い落とされ、筏に縋ろうとした歩兵たちは海兵隊に次々と切り落とされた。
「こ……これは、地獄だ」
パイクスタッフですら、丸木の床にくずおれた。

「ほう、それで我が軍は撤退したのか」
「は……はい」
「愚か者!」
命からがら逃げ帰ったレヴァリーから報告を受けたカリギュラは、テーブルの上の料理をすべて床にぶちまけた。
「兵力の九割を失っておいて何が撤退だ!」
「も、申し訳ございません、すべて私の失態です」
「まあよい、レヴァリー。七万くらいの兵ならもう一ヶ月もすれば集まる。問題は、皇帝陛下がこれ以上の延戦をあまり望んでおられないという事だ」
「では、次の攻勢で必ず」
カリギュラは椅子に座り直すと、窓から占領したトルスの城外を眺めた。荒れ果てた市場。民は、疲弊していた。
(なんとしても、次で決めねばならん)

 合戦の後、数日間ヴェスト川の河口は帝国軍の連隊旗と血で赤く染まっていた。その河畔に、二人の男が立っていた。
「だから、俺すらその当日まで作戦内容を知らされていなかったんだ」
「そんな理由で七万の兵を失った弁解になるとでも思ったのか。君があんな情報を流すから我々は負けたのだ」
男は踵を返すと、無能な諜報員に言った。
「本部では君の処分も検討されている。君にはもう諜報員としての信用がないのだ。私としては君に死んでほしくはない。今度こそ、本物の情報を見つけろ」
「ハッ」


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