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マグの足跡(千葉)完
エンディング
それから数日が経った。
王女が無事救出されたという知らせに、ミガサ王国全土が沸いていた。
また、王女を助け出したのが、隣国・ヨドの人間であることも注目を集めた。
「こちらです」
「どうも」
この日、マグはミガサ王国の宮殿に招待されていた。
つけヅノをした兵士に案内されたのは、玉座の間である。
そこにはミガサの国王と王妃に、例の頼りなさそうな王子、そして王女がいた。
当たり前といえばそれは少し違和感があるが、みんなツノが生えている。
しかし、自分が一国の宮殿にいるなんて、よくよく考えれば凄いことだ。
すこしまともな服をこしらえられれば、とも思ったが、そんな余裕は無かった。
「やあやあ待っていたよ!」
国王の威勢のいい声が響き渡る。
「君のおかげで本当に助かった!」
「は、はぁ、どうも」
とりあえずそう返す。
「…本当に、ありがとうございました」
ムーン王女がこちらに寄ってきた。
「い、いやどうってこと…」
「マグさんが無事で、…良かったです」
王女にこう言われるなんて、幸せだなぁ。
今までの苦労も悪くはなかったか。
「そういえば、お礼の件なんですけど」
「お礼…そうだ、お礼!」
そう言ってから、マグはハッと口を押さえた。
いかんいかん、いつもの調子で言ってしまった。
しかしその様子を見て王女は馬鹿にするのでもなく笑うでもなく、ただ少し俯いた。
「…、非常に申し訳ないんですけど…」
「…ど?」
嫌な予感がする。
「この国も今は財政が苦しくて、チマチーカの復興費用も必要で…」
「ちょっと待って、まさかナシってことは…」
王子の方を見やった。
「す、すいません…」
相変わらず気弱そうな声で王子は謝った。
「そ、そんなことがあるかよっ………!!」
「あ、でも…私のお小遣いなら…」
半ば泣きに入ったマグを見て、王女は何やらゴソゴソやってから、金コインを数十枚、マグに手渡した。
「これぐらいしかないのですが…気持ちだけでも」
「ちょ…これでも充分ですよ!!」
こんな大金、…手にしたことは無かった。
おそらく、これで半年以上は持つか。
「ありがとうございます!!」
マグがそう言うと、王女は微笑んだ。
正直ちょっとドキっとした。
「…マグさんはこの後どうするんですか?」
「多分、旅に出ると思います」
「そうですか…」
王女が少し寂しげなのは、きっと自分の錯覚だな。
「俺はここを離れたら、あなたとは暫く会えないですけど…
俺のこと、忘れないで下さいね!」
「ええ、もちろん!」
また、王女はニコっと笑った。やっぱり俺は幸せ者だ。王女は続けて言う。
「…マグさん。今日一日、ここで過ごしてはどうですか? お礼もこれだけじゃしたりませんし…」
おっ?
「そうだな」
国王がうんうんと頷く。
「いいんですか?」
マグは口ではそう言っているが、既に泊まる気マンマンであった。国王は勿論、と満面の笑みで返した。


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