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天と地と、その狭間で(禮晶) 完

「流石だな。このご時世にしては豪華だし、美味かった」
「まぁ、一応この地を治める氏族ですから」
運ばれて来た食膳(蒼がちゃんと二人分運ばせていた)を平らげた翡は素直に感想を述べた。
お茶を啜りながら、ふと思いついて問うてみる。
「お前の弟、いつもあれなのか?」
あれ、の意味を正確に汲み取った蒼は苦笑交じりに言う。
「そうですね、かなり嫌われてますし。でも」
食膳に視線を落とす。
「今日の献立…」
「献立?」
蒼は穏やかな微笑を浮かべながら言った。
「膾とか漬物とか…あれ、全部私の好物なんです」
黙って外へ出歩いて、怒られた日の食事はいつもこうらしい。
青なりの気づかいなんですよ、と蒼は言う。
別に心の底から疎まれている訳ではないらしい。
「遠回しな気づかいだな」
「えぇ。でも、無いよりマシでしょう?」
「確かに」
あった方が良いに決まっている。
「それと…、青とは約束しているんです」
「約束?」
「この戦乱の世が終わっても私達氏族が生き残っていたら外に…旅に出て良いと」
戦乱の世においての氏族の生き残り。
敗れ、何処ぞの氏族に併呑されるか、勝ち残り、そして…
(唯一の氏族に…皇族になる、と?)
限り無く可能性は低いだろう。正直な所、蒼達の氏族はど田舎の氏族なのだ。
軍事力は皆無、地理的にも東に外れ過ぎていて何処からしても戦略的価値が無いからこそ、今はまだ平和なだけなのである。
「……だから、良いんです。」
「そうか」

(皇族…帝、か)




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あきゅろす。
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