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天と地と、その狭間で(禮晶) 完

「えーと、こんにちは」
何だこいつは、と思った。
まぁ…当たり前の様に自分が『視えて』いる事からして普通の人間ではなさそうだったが。
身なりの良さからして、この辺を治める氏族の者だろう。
しかし、何とも間の抜けた男である。
今、人界ではあちこちの氏族が天下の覇権を争っており、油断すれば即座に負けなのだ。騙し討ちも大アリである。
子供の刺客だなんて珍しくも何ともない。
そんなご時世に見てくれからして怪しい子供に、しかも人ならざるモノに『こんにちは』とか言うだろうか?
(言わないだろう、普通)
そう、普通なら言わない。普通ならば。
言うのはとんでもない馬鹿か、或いは……
「私は蒼(ソウ)と言います。貴方は?」
「お前に名乗る名など無い」
神仙の中には『人間なんぞ地を這う下等生物だ』と捉えている者も少なからずいるが、別に其処までは思っていない。
ただ、面倒臭かったのである。なんで一々名を教えなければならないのだ。
そう思って答えなかった彼に気を悪くする風でもなく、蒼と名乗った青年はにこやかに宣言した。
「じゃ、不便なので勝手に呼びますけど…えーと、翡(ヒ)?」
「は?」
一音かよ、という突っ込みしか出来無かった。
訳が分からん。ある意味、非常事態発生である。
「目が綺麗な翡翠色だから」
「……。そういうお前も、『普通』の色ではあるまい?」


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