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天と地と、その狭間で(禮晶) 完
拾玖
『蒼?』
『…老けた』
『蒼、老けたー』

彼らの声を聞く事はとても簡単だった。
…ただ、聴きたいと思うだけで良かった。
蒼は言葉では表せずしこりとなって残っていた感情が淡く、白く晒されて行くのを感じた。
「…やぁ、久しぶりだね…」
風の子達は相変わらず彼の周りにふよふよと漂いながら、意外な事を言った。
『ずっと居たよ?』
『…蒼の傍』
『蒼の傍、ずっと居たよ?』
蒼は瞠目して、…よろよろと地面に座り込んだ。
片手で顔を覆う。
『蒼、どうしたの?』
『…老衰』
『精力減退?』
上二つはともかく、最後は違うだろうと蒼は思った。
知らず、笑いが込み上げて来る。
「はは…ははは」
蒼は地面に座り込んだまま肩を震わせた。
風の子達が顔を見合わせる気配がした。一拍後、彼らも笑い出した。
「何故君達まで笑うのさ…」
『蒼が笑うから』
成程、ごもっともな答えである。
此処に至ってようやく当初の目的を思い出した蒼は風の子達に尋ねてみた。
「天帝陛下…彼に会う事は出来るだろうか…?」
自分の寿命が尽きるまでなら幾らでも待つつもりでいた彼だが、風の子達はあっさり答えた。
『会えるよー』
「それは有り難い。何処でなら会えるか分かるか?」
「……此処で、だな」

いつかの夏と同じ姿で彼は其処に立っていた。
懐かしい翡翠色の瞳が、何とも言えぬ複雑な色を湛えて此方を見ていた。


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