[携帯モード] [URL送信]

天と地と、その狭間で(禮晶) 完
拾伍
「青!止せっ!」

分かっていた事だった。
間に合わないと分かっていた……

「……馬鹿野郎っ!!!」




「青!…っ、何故…」
ついさっき、『滝壺で鮎が釣れたから三人で食べよう』と言っていたのに。
鮎は七輪の上に乗せられたままだ。食べ頃はとっくに過ぎてしまって、最早消し炭になりつつある。
では、何故魚の身が焦げる匂いでなく、吐き気がしそうな程の血臭が漂っているのか。…答えは一目瞭然だ。
…血まみれで事切れているのは、青だった。
翡と蒼が厨の勝手口に到着した時…目の前で、虚ろな目をした青が鮎を捌いたらしい刃物で自分の喉を掻っ切ったのだ。

「…太白剣に掛けられた呪だ。俺にも、天帝にも、どう仕様も無い…」
天帝だからこそどうにも出来無いと、翡は一切の感情が失せた声で呟いた。
天帝、という言葉に蒼は顔を上げた。
神仙の世界の、最高権力者。
「……翡、貴方…」
「すまない」
すっ、と翡の姿が淡くなり、消えて行こうとした。
「っ、待て!」
蒼自身でさえ驚いた程、鋭い声。
…青に似ていると翡はぼんやりと思った。

「何故弟は死なねばならなかった、太白剣の呪とはいかなるものなのか…まだ聞かせて貰っていない。」
「…あぁ」

耳の奥に遥か昔の自分の声が蘇って来た。
昔、蒼と同じ事を叫んでいた…
答えが無い訳ではなかった。答えが自分というだけだった。

…話さなくてはならなかった。


[*前へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!