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黒泥に這う (紺碧の空)
錆鼠の壌
 通路の中は何度も揺れ、何本もの水道管が破裂していた。ぐずぐずしていると、溺れ死んでしまう。
「中隊長殿ぉおお」
声が何度もこだまする。真っ暗で、戦車のライトを点けないと何も見えなかった。列が止まる。敵に感づかれないために無線封鎖をやっているのだ。
「中隊長殿、道が塞がってます」
「何だって!」
おそらく地上からの爆圧に耐え切れず、天井が崩落してしまったのだろう。ラストニア陸軍は進退窮まった。
「爆薬で開通できないのか?」
「わかりません……むしろ全員生き埋めになる恐れが」
「スコップならありますよ」
俺は言ってみたが、冗談にもならなかった。折しもその日はクリスマスであり、南半球のラストニアは猛暑だった。トンネルの中は耐え難い温度になっていったのだ。
「こんなところで死んでたまるか……一か八かだ。全車両、榴弾込めぇ!」
俺の戦車は何度も言うように、弾が無かった。仕方なく後ろの方で待機する。
「撃てぇ!」
中尉が狙ったのは、埋まった通路の斜め上だった。爆音と、濛々たる土煙。視界が晴れると、そこには青空があった。助かったのだ!


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