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蒼空に散る (紺碧の空)完
退紅の空
 七時頃になってやっと、隊長から呼び出しがあった。二人で隊長室へ向かう途中、彼女が走っているのを見かけた。書類を抱えていたことから推定するに、事務も引き受けているらしい。スキンヘッドは、ドアをノックした。
「入れ」
大柄の男が、デスクの向こうに座っていた。片目に、大きな傷。無精ひげの生えたその口からは、死んでも「ドネシア万歳!」という言葉は出てきそうになかった。
「本日オーザ基地に配属されました、ローベルト・リヒナー曹長です」
「俺はルイ=クロード・ライネッケ。ここの責任者だ」
階級章を見る。少佐!
「長旅ご苦労だった。掛けろ」
ライネッケ少佐は椅子を指差した。しかし、どうしてこんな人がど田舎の空軍基地にいるんだ? パイプ椅子を広げ、座る。
「グスタフもだ」
スキンヘッドも座った。少佐は指を曲げ、もっと近づくように指示した。
「諸君らが招集されたのは他でもない、五日後の掃討作戦のためだ。奴らの残党は着々と兵力を結集しつつある。ここの辺りはしばらく静かだったが、どうやら奴らはここの南のフォイーユの森で大規模な反攻作戦を計画しているらしい」
言いながら図面を広げる。俺にはそれが一瞬すばらしい絵に見えたが、ただの地形図だった。
「ここが現在地。ここにスレッタ基地があり、敵の本拠地はこっちの窪地の辺りにあると推測される」
少佐の指の動きを目で追ってゆく。色黒で、しわが深く刻み込まれた指だ。少し震えていた。
「本当なら明日にも作戦を開始したいところだが、我が軍の陸軍兵力がまだ十分に集まっていない。それに、なるべく敵を集めて一気に片付けたいというのがお偉いさん達の考えのようだ」
そう言うと、ライネッケは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「まあ、俺達にはどうすることもできん。とりあえず、九日までは休暇だと思ってゆっくり休め」
行ってよし、という雰囲気だったので、敬礼をして部屋を出た。グスタフは少ししてから出てきた。
 
 これといってすることもなかったので、基地の外を見てみようと思った。もしかしたら、何か良い絵の題材が見つかるかもしれない。大きな滝とか。ところが、ゲートでアランに止められた。
「あんた、この周りには何もないぜ」
「そうですか……でも、少し森に行きたいので」
「フン! そんなことしてると、ライネッケみたいになるぞぇ!」
じいさんは去って行った。一体何のことだ。俺は、ゲートの前で十分ほどボーっとして、なにも思いつかないので本舎に戻ることにした。


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あきゅろす。
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