縹(禮晶)完 参 翡は付喪神と呼ばれる類の、物が悠久の時を経る内に生命を得た存在であった。 故にその本体を損なってしまえば生命を維持する事は出来ず、一瞬の内に消えて死んでしまう。 縹の目の前で翡の存在は消えてしまった。 『…師匠……っ』 茫然自失状態だった縹へ、神仙や人間の様々な事情に通じている友人が教えてくれた。 彼の本体は齢一万年を超える様な翡翠の大玉であり、太白剣という宝剣の柄に飾られていたという事。 その太白剣はかつての天帝が人界の帝たりえると思った一人の若者に下賜したもので、今も人界にある事。 そして……翡の本体であった大玉はどうやら意図的に損なわれていたらしい事。 つまり、翡は人間によって殺されたのだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |