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縹(禮晶)完
弐参
天帝は童子の姿から元の姿に戻った。
その掌の中には淡く光り輝く珠が、一つ。
……霊魂……縹、だ。
「お前もつくづく鈍い奴であったのだな。十六年もの長い間、共に過ごしておった者の思いすら察してくれぬとは。」
翡翠の大玉なぞ、数多くある仮の姿の内の一つだ。
縹を騙すつもりはなかったのだが大玉が壊されてしまった以上、いつまでもその姿を人目に触れさせる事も出来ない。
それで、てっとり早く翡・死亡という設定にしたのだ。
想定内だったが、仇を討とうとしてくれた縹の行動は、
「……嬉しかったよ……本当に。」
いずれ自分の嗣子として正式に発表するまでの間だが、……少し、職権濫用まがいの事をしようと思う。
天帝という最高権力の座はこういう時に便利だ。
「確か、人間は十六で一人前だったかな。」
この気が変るまでの短い間だけの夢なのかもしれないが、それでも人間としての幸せな夢をみさせてやりたい。
あの人間の皇帝の弟と再会したら、一体どんな顔をするか。
「それにしても実は翡の本性は私だったのだ、などと言ったらどれだけ謝る羽目になるか……恐ろしい」
怒った時の縹は手のつけられないほど凶暴になる。
天帝は思い出したくない十六年間での出来事を思った。
まぁ、仕方が無い。自業自得という奴だ、きっと。
「人界で楽しんで来るが良い、縹。我が息子………」


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あきゅろす。
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