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縹(禮晶)完
拾壱
縹は素早く辺りを見渡した。誰も見ていない事を確かめると、しゃがみこんで地面に両方の掌をそっと押し当てる。
微かな湿り気を帯びた土の匂い。仄かに温い地熱…
しばらくすると、閉じた瞼の裏側に次々と淡い幻影が浮かび上がって来た。一つずつ丁寧に解析して行く。
……地の記憶。
地の属性の縹は、それらを共有させて貰う事が出来た。
(今日の成果は…無し、か。)
兵士や女官達の雑談、愚痴、そんなものしかない。
せいぜい、料理人達の会話から玉の今日の夕食が魚料理だと推測出来た事ぐらいである。
諦めて両掌を地面から離そうとした時、
(………?)
十六年前、双子、翔鳳峰。
地はそんな断片を記憶していた。
だがこれでは何を伝えたいのかがさっぱり分からない。
(もっと詳しく…)
縹は探ろうとしたが、いきなり弾き出された。
(何故?)
地に問うても先刻の言葉が繰り返されるばかり。
釈然としないまま、縹は地から両掌を離した。


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