羽那陀(禮晶)完 弐 (普段こんな衣が着られたら大喜びなのに) 明るい色合いの綺麗な衣を纏っていたが羽那陀(ハナダ)の気持ちは少しも明るくなってはいなかった。 「羽那陀、水神様の花嫁になると思っておくれ」 「御両親の事は皆で助けるから心配するな」 水神様、というが本当はただの凶悪な水の妖魔だ。 その事は皆承知しているが、数十年前に妖魔だと言った郷長の郷がその数日後に水底へ沈んで以来、皆は恐れて水神様と言う様になった次第である。 今年は水害が酷く、食物や財宝を捧げたが一向に収まらないどころか益々酷くなった。 これ以上はもう限界だという所まで追い詰められた郷民達はとうとう若い娘を一人、『水神様』の生け贄として籤で決めて差し出す事を決意したのだ。 そして、羽那陀は選ばれてしまったのである。 [*前へ][次へ#] [戻る] |